西暦3300年、物的資源問題を解決した人類は、自らの量子化を済ませており、
優雅で怠惰な、種としての余生を過ごすのみとなっていた。
荒廃した地球を見捨て、雲上都市へと逃げ去った人々は、
しかし、孤独に苛まれ、地球全土を網羅する過去の遺産たるネットワーク上に、
六つの学園からなる一つの楽園を構築した。
これをRe:Worldと呼ぶ。
仮想空間上の学園に転校してくる自身の情報を伏せた天界人の中に、
記憶を持たない少年が現れたとき物語は始まる。
くしくも眺望を司る華久楽大付属雅高等学校では、
一年次の代表によるクラス対抗レクリエーションが始まろうとしているところだった。
「ところで、習志野さん」
偲に向けられていた視線を奪い返すように十和子が言った。
「はあ、なんですか?」
「あなた私のものになりなさい」
脇でふたりの会話を聞いていた志弦の思考が、十秒ほど停止した。
──え、このひと、何を言っちゃってるんですか? 頭おかしいんですか?
とでも思っているのだろうか、目を白黒させてから志弦は口を挟もうとした。
だが、その前に、習志野が短く応えた。
「嫌です」
(本文54ページより)
【初版のおまけ】
『世界再生の書物と一つの楽園』初版には、おまけとして栞をつけております。
宵町めめさんによる美しい背景イラストを大胆に用いた、普段使いもできるシンプルな栞です。
是非、ご愛用ください。
【二版発行のお知らせ】
秋山管理分の在庫がゼロとなりましたので、増刷することに決定致しました。
増刷に際し、誤字脱字の修正、組版の変更、体裁の見直しを行いました。初版との大きい変更点としては、カバーがなくなったことです。これによって原価が下がりましたので、二版の販売価格は800円とさせていただきます。
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