梅雨の晴れ間となった通学路を、ふたりの女子が歩いている。
式場白夜と王妹だ。
明晰夢を見たと語る王妹に、白夜はひとつの疑念を抱く。
一方、ディラン志弦に怪奇幻想小説を勧められた工藤十和子は、
恐怖という概念について考察する。
そして、日常に退屈した彼女らは、十三不思議の謎に挑む。
Re:World──六つの学園からなる、一つの楽園。
『世界再生の書物と一つの楽園』から一ヶ月。
今、再び、華久楽大付属雅高等学校を舞台に、物語が幕を開ける。
「そうですね……エドガー・アラン・ポーの『黒猫』なんてどうでしょう」
「それも、怖い話なの?」
「『恐怖は人類の最も古い感情である』クトゥルフ神話で知られるラヴクラフトの言葉です。後、これは私が好きな、或る幻視蒐集家の言葉ですけれど『怪談は、幻想文学の中でも、最も原始的であり中核』」
「どういう意味なのかしら」
「恐怖という感情と、人類の進化の系譜は、密接な関係にあるように思うんですよね。分かりやすく言うと、恐怖×進化」
「え?」
「ごめんなさい。えっと、つまり『黒猫』は怖い話ということです」
(本文40ページより)